別の記事では、発達障がいが分かったときに彼女にどう打ち明ければ良いのか?その注意点などについて話してきました。
もうひとつ、障がいを打ち明けると大きく影響するところ、それが会社ですね。
私の場合、妻に打ち明けるときはだいぶ布石を打っていたこともあったのですが、会社の場合いったい何を言われるのか?

気が気ではありませんでした。。
画面の前のあなたも、おそらくそういう不安を持ってここに来られたのだと思います。
そこで今回は、実際に発達障がい(自閉症スペクトラム)をカミングアウトした私の体験談をはじめ、職場(上司)に伝える時の注意点をまとめました。
会社へ発達障がいを報告~私の体験
理解の度合いは上司によりけり
私の場合、家族(妻)に先に打ち明け、その後上司に報告しました。
その際、報告する内容の骨組みから、想定される質問に対する切り返しまで、だいぶ考えに考えました。
杓子定規(しゃくしじょうぎ)に考えるなら、入社面接のときは健常者として応募したので、それを後から『実は、健常者ではありませんでした』と覆すわけです。
なので、規約違反と捉えられるのではないかという心配があったんです。
悪く言えば詐欺師になるわけですね・・・
ただ、本当にこればかりは仕方がなかったんです。
一般的に”大人の発達障がい”は子どものうちは全く分からず、社会へ出て色んな場面でうまくいかないことがあったり、ストレスを感じたりすることが繰り返されて精神科医にかかって初めて分かるパターンが大半です。
上司はそのことを知らず『そんなのは前から分かっていたことじゃないのか?』と言ってくることも考えられたので、
- 発達障がいは学生の頃は問題なく、社会人になってから明らかになる場合が多い
- 発達障がいはまだまだ広く認知されていない
という方向性で説明の骨組みを立てていました。
しかし、当時の上司は個人の事情をかなり汲んで(くんで)くれる人で、話はすんなり分かってくれました。
ただ、発達障がいを持っているとどうしても出来る仕事の範囲が限られるんですよね。
私の場合だと、
- 環境ストレスにつながるので、転勤不可
- マネージャー業務ができない
- 営業・企画・サービスの職種は絶対向かない(できない)
- 管理職へ昇進しても、求められる能力を発揮できない
大企業であれば、転勤や職種異動を経験して昇進していくんですけど、そういった大企業人としての根幹の部分において適正がなかったのです。
ただ一方で、私だからこそできることも少なからずありました。
- 大多数のプロジェクトは決まって数か月の遅れが出るが、自分が手掛けたものはほぼ納期どおり。遅れたとしても数週間に抑えてに完遂できている。
- 小さなタスクでも作業を工夫することによってフォロー漏れを最小限に減らせている。
- ○○という分野は長く関わっているので、その専門性を生かして業務に取り組めている。
- 単調な作業は長時間続けても苦にならないので、大量にアウトプットできる。
カミングアウトの時は、制約の話だけでなく会社に対して貢献できることも添えて説明したことが理解を得られたポイントではないかと思っています。
しかし、数年後に部署のトップの部長が異動になり、次の部長に話をした時が微妙でした。

何もハンデを抱えていない人に対してならチカラの出る言葉なんだと思いますが、普通の人と同じようにいかないから相談をしたのに、という感触でした。
あからさまに理解を示さない態度でもなく悪意も感じませんでしたが、やはり健常者には理解されにくいんだと感じました。
ただ、仕事面で部長と直接やり取りをしないといけない場面は少なかったので、あまり支障が出なかったことが幸いでした。
自分にとって、辛いこと
やっぱり、このへんはかなり難しい問題なので、理解される度合いは人によりけりなんだと、あらためて感じました。
自分は身体は五体満足だし、知的障害者でもない。
だからこそ、余計に理解を得るのが難しい。
パッと見、普通だと思われる
これが周囲の理解の足かせになってるんじゃないかなって思います。

↑↑この言葉は、私が発達障がい者であることを告白した相手の半数近くがかけてきた言葉です。
おそらく、いや間違いなく、相手には悪気はなかったでしょう。
むしろ、『気にするな!』と元気づけてくれた意味だったのだと思いますが、私には、

こんな風に聞こえるんです。
同じ発達障がいの人なら、経験したことはないでしょうか?
あのように言われると、何のための診断だったのか意味を感じなくなるんですね。
なので、理解が今一つだった部長に対しては、次のように補足しておきました。

病気でないからこそ、治療法もないんです。
知的障がいだって治らないし、片腕しかない人も一生そのままですよね。
私も、そういう人と同じなんです。
そのとき、部長はちょっと考え込んだ様子でしたが、やはりすんなり分かったという感じではありませんでした。
ハンデを抱えているとハッキリ分かる人に対してですら酷い言葉を浴びせてきたり、健常者の当たり前を押し付けたりしてくる人もいるので、まだまだ発達障がい者に対する世間の理解が追いついていないんだと感じさせられました。
会社へ発達障がいを伝えるときにしてはいけないこと/すべきこと
NG!禁止事項
彼女に説明するところでも紹介しましたが、会社に対しても同じく、そのまま黙っておくことが最悪の結果を招きます。
ずっと黙っていればいずれ自分がメンタルダウンして長期休職になるなど、会社にもダメージを与えてしまいかねません。
ただ、私も同じような場面の時に調べたのですが、会社の場合は後から発達障がい者だと分かったとしてもクビにしたり不利益な扱いをしたりすることは違法とされています。
また、業種・職種によっては障がい者の雇用比率が決められている場合もあるので、よほどのブラック企業でない限りは心配することはないでしょう。
カミングアウトはこうしよう!
それならいつ、どういうときにカミングアウトするか?ですが、タイミングは、
できるだけ早いほうがいい
です。
彼女に打ち明けるときと全く同じですが、時間が経つほど、気持ち的に言いづらくなりますし、上司もその後のことも早めに考えることができるので、言いやすいときに伝えておくのがいいですね。
次に場所については、会社(上司)に報告するとき、あらかじめ個室の会議室を押さえておきます。
今後にかかわる重要なことで、あなたの声を誤解なくしっかり聞き取ってもらわないといけませんから、そういう環境を準備するのは基本のキですね。
最後に場面、つまりどういう時に伝えるのか?ですが、もちろん伝える相手が時間に余裕のある時になります。
最後に最も重要なこと。
それが、上司が話を聞ける状態なのかを考えることです。
当事者にとって人生を左右しかねないことですから、『ちょっと、今からお話いいでしょうか?』のノリで手短に済ませてしまうと、後々になって相手から、『聞いてないよ~』ってなことになります。
(出典:ミドルエッジ)
なので、上司と前もって日にち・時刻をすり合わせて、あらかじめ1~2時間ぐらい時間を取ってもらうつもりで臨んだほうが、キッチリ伝えるべきことも伝えられます。
そして、その話し合いの交渉をするときも、比較的上機嫌の時にするのがベターですね。
発達障がいを会社へカミングアウトするときの注意点
大人の発達障がいは最近知られてきていて、アスペルガーやADHDなどの単語をいえば話が通じる人も増えてきました。
しかし、どんな症状が出て、本人がどう苦しめられているのか、周囲の人にどういう影響があるのかまで理解している人はわずかで、それを伝えて相手に配慮してもらうとなると、まだまだハードルが高いのではないかと感じています。
はじめの体験談でも小出しにしましたが、実際にカミングアウトを経験した一人として、次の点に注意・工夫が必要だと考えます。
自分に出来ることも考えておく
体験談で少し話をしましたが、特に会社・上司を相手に打ち明ける際は、
自分の持っている能力で、どんな風に会社に貢献できるのか?
を明確に説明できるようにしておくと良いでしょう。
というか、それを説明しなきゃいけませんね。
障がい者だからという理由だけで即刻クビにしたり不利益被らせたりすることは許されませんが、会社の社員である以上、会社にメリットを提供することは大前提です。
それと引き換えに給料をもらっているわけですから。
私の場合、
- 集中力に長けているので、作業が早い
- 仕事中に雑談を一切しないので、効率が良い
- 納期意識が高い
- 自己管理力に優れていて、フォロー漏れがない
こういった能力では誰にも負けていません!
個人の能力は人それぞれですから、あなたなりの誰にも負けないことを探して、それをアピールしましょう。
万一のための準備はしておく
どんなに工夫を凝らしても、全く理解しようとする姿勢がみられず、なお健常者の普通・当たり前を押しつけてくることもあり得ます。
また、初めて打ち明けてその時は理解を示してくれていても、後になって手のひらを返されたような態度になることも考えられます。
特に会社・上司が相手だと、トップの言うことが変われば直属上司の言い分も変わってしまいます。
そこで、絶対に準備しておきたいのが、ICレコーダーです。
相手の不適切な発言はもとより、言った・言わないをなくすためにも必須といえるでしょう。
ただ、録音していることが分かっていると相手も構えてしまってホンネが聞きにくくなるため、私はペン型のICレコーダーを使っています。
PCにデータを保存できることはもちろん、容量も8GBぐらいあれば長時間の話し合いにも対応できます。
正直なところ、お値段は少し張りますが、いざという時の用心棒になってくれるのでここは思いきって投資してしまいましょう。
まとめ
発達障がいを打ち明けて、会社からの待遇が悪くならないだろうか・・・
そんな心配を抱えている人へ向けて、私の体験談とともに伝える際の注意点もあわせてお話してきましたが、もう一度、内容をおさらいしておきましょう。
残念ながら、絶対に安全というものはありませんが、ご自身で考えてここでお伝えしたことをしっかり守っておけば、リスクを減らせることは間違いありません。